病院・診療所等の管理者の常勤性の根拠について
病院・診療所等の管理者の常勤性の根拠について
医療法上には明確に「管理者は常勤でなければならない」との規定はありませんが、取扱い上、病院・診療所の管理者については常勤であることが当然とされ、常勤でない場合には開設が認められず、万が一開設後に常勤でないことが判明した場合には指導改善が求められています。
実際に美容エステなどで医療行為を行っていたが、管理者が常勤でない事が分かって処分されたケースなど管理者の常勤性違反での処分は結構あります。
埼玉県では県の職員に対しても処分をした事を公表しています。
医療機関の管理者の常勤性の根拠は以下のような内容によります。
まず、医療機関の管理者とは医療法により原則医師(歯科医師)に限定されているものの、医師や看護師とは違い管理者という名称の資格ではなく、医療機関を管理するものを定めて、その定めらた者を管理者は誰それであると開設時に届けでた者の事です。
診療所の管理者は他の許可を受けなければ他の診療所の管理者とはなれないことになっており、例外的に許可がされるのは、すでに管理している診療所の診療時間と新たに管理しようとする診療所の診療時間に時間的な重複がなく、それぞれの診療所において管理が可能な場合に限られます。
逆に言えば、診療所が診療している時間は、そこの診療所を管理していなければならないことになります。
【医療法第12条2】
病院、診療所又は助産所を管理する医師、歯科医師又は助産師は、その病院、診療所又は助産所の所在地の都道府県知事の許可を受けた場合を除くほか、他の病院、診療所又は助産所を管理しない者でなければならない。
【医療法施行規則第9条】
病院、診療所又は助産所の開設者が、 法第12条第2項 の規定による許可を受けようとするときは、左に掲げる事項を記載した申請書をその病院、診療所又は助産所所在地の都道府県知事に提出しなければならない。
(1) 当該医師、歯科医師又は助産師が現に管理する病院、診療所又は助産所及び当該医師、歯科医師又は助産師に新たに管理させようとする病院、診療所又は助産所の名称、所在の場所、診療科名、病床数及び従業者の定員
(2) 当該医師、歯科医師又は助産師に、当該病院、診療所又は助産所を管理させようとする理由
(3) 現に管理する病院、診療所又は助産所と、新たに管理させようとする病院、診療所又は助産所との距離及び連絡に要する時間
次に、管理者の管理義務について、医療法では次のような定めがあります。
【医療法第6条の10】
病院、診療所又は助産所の管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、医療の安全を確保するための指針の策定、従業者に対する研修の実施その他の当該病院、診療所又は助産所における医療の安全を確保するための措置を講じなければならない。
【医療法第15条】
病院又は診療所の管理者は、その病院又は診療所に勤務する医師、歯科医師、薬剤師その他の従業者を監督し、その業務遂行に欠けるところのないよう必要な注意をしなければならない。
さらに、法律ではありませんが医療機関の管理者に関する通知には以下のような規定があります。
【通知‐医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について‐】
医療法第10条に規定する管理者とは、開設者の任命を受けて医療機関の管理・運営について責任を持つ者で医師に限定されていること。
また、病院の管理者は常勤であること。
以上により、診療所等の管理者には、診療所内にて行われている医療の提供内容について診療時間中は常に説明・指導・把握する義務があり、そのためには当然常勤性が求められます。
管理者である医師が休みの日には、まったく診療所を営業することができないと言う事ではないですが、少なくとも通常の常勤性が認められる程度の勤務実態がなければ管理していることに関して認められなくなります。
診療所の管理者の常勤性については、根拠がないので常勤でなくても大丈夫ととれる内容のことを言っている方もいるようですが、すくなくとも保健所から管理者が不在と判断された場合には、確実に行政指導等の対象となりますので注意が必要です。
どうしても行政指導・行政処分に納得ができず常勤でなくても問題ないと言いはるためには、弁護士などを立てて行政と裁判などで争って勝つ必要がでてきますが、ほぼ勝てる見込みはないと思います。