『医業とは』医業の定義と主体について

まず、『医業​』とは「医行為を業として行うこと」ですので、医行為を業として行っているのであれば、医師個人に関わらず法人でも『医業』を行っているとみなされます。
つまり、違法でないかどうかは別問題として、医業は医師個人でも法人でもその『主体』とはなりえます。

つぎに、『医行為』ですが、『医行為』とは「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は及ぼす恐れのある行為」あるいは「医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行うときは、生理上危険のある程度に達している行為」とされています。
また、『医行為』であるかどうかは、目的または対象の如何によるものではなく、その方法又は作用の如何によるものとされています。
そして『医行為』は医師または医師の指導監督のもとで医療資格者(看護等)が行うこととされています。

さらに『医行為』が行われる場所は、往診等の場合を除き医療施設(病院・診療所・老人保健施設)に限られます。
そして病院・診療所・老人保健施設を開設できるのは、医師個人または許可を受けた非営利法人に限られます。

つぎに、『業』として行うという事についてですが、これは「反復継続の意思をもって行うこと」と言うのが判例上確立しており、繰り返し行う意思があれば営利を目的とするかどうかは無関係で無料で行っていても、逆に協力者に代金を支払っていたとしても、また実際に行ったのが1回でも、その後も同じような行為を行うつもりがあれば、その行為は『業』として行っているとみなされます。

【まとめ】
上記のとおり、毎回担当する医師が異なっていても、その主体が同一であれば、その同一主体が同じ目的で『医行為』を医師に行わせれば、それは『医業』にあたります。
また、『医行為』ができる場所は、偶発的な緊急救護的な場合を除き1回のみでも診療所等に限られます(訪問診療専門の場合でも、医師個人の自宅を診療所として登録することが必要)。
つまり、医師法では医師でなければ医業をなしてはならないとされていますが、医療法により『許可を受けることで』、医師個人ではなく法人が主体となって医療機関を開設して医師に医業(医行為を反復継続する意思をもって行う事を)行わせ、医行為を法人の事業として行うことができることなっておりますが、医療機関で行なわれる医行為に関しては、医療機関の管理者である医師がまずその責任を持つ事になっております。

≪参考≫
第十五条  病院又は診療所の管理者は、その病院又は診療所に勤務する医師、歯科医師、薬剤師その他の従業者を監督し、その業務遂行に欠けるところのないよう必要な注意をしなければならない。

そして、株式会社が診療所を開設することは、従業員用の社内診療所などの例外を除きできません。

病院・診療所でも複数の医師が居る場合に、初診と再来時で診察する医師が異なることがあったとしても、同一の患者に対して診察を行っていることや、同時に2名以上の患者を別々の医師が診察している事があると思いますが、それで医業にあたらないとは言えないですよね。

つまり、行なわれたい内容が1回であっても医行為にあたる内容である限りは、診療所等の医療機関で行われなければ違法となり、実際に行為を行ったものが医師であったとしても、その場所が診療所等または往診として行ったものでなければ、医師の医療行為の違法性阻却事由も否認され、その行為は障害行為として刑事罰の対象となりえると考えます。