広域医療法人化すると持ち分なし医療法人になると言う間違った理解へのセカンドオピニオン例

広域医療法人になると持分が無くなると言う間違ったコンサルへのセカンドオピニオンの相談事例です。

先日はご来所頂きましてありがとうございました。
ご連絡を頂きましてありがとうございます。

さて、広域化を行うと現行の規則により
持分制度が廃止になると言っている

との事ですが、無条件に持分制度がなくなるとのお話だったのであれば、ご相談された税理士の方は医療法の理解が正確ではないようです(医療法を完全に詳細までちゃんと理解している税理士はほとんどいませんが・・・)。

まず、現在の医療法上で現状持分のある医療法人の持ち分が無くなる手続は、『持分のない他の医療法人との合併』をする場合と、『特定医療法人』や『社会医療法人』に認定を受けて移行する場合、または自ら持分の定めのない医療法人へ定款変更する場合に限られます。

従いまして、持ち分の定めのある医療法人が他県へ新たに診療所を追加する認可を受け、いわゆる広域医療法人になる場合には、間違って認可申請時に持分の定めのない医療法人の定款の形式で変更後の定款案をつくらない限りは、持ち分のある医療法人は広域医療法人になっても持分の定めのある医療法人のままです。

ただし、間違ってでも一度持分の定めのない医療法人としての定款の認可を受けてしまうと、『後戻りはできない』と医療法上で定められているため、間違って定款を作ってしまったからなかったことにしたいと言っても、持ち分の定めのある医療法人の定款に戻すことができなくなります。

その為、医療法の理解のない会計事務所やコンサルタントが、国や都道府県の提示している定款例を元に定款を変更してしまい持分が無くなっていしまっている例が見受けられます。

特に、平成19年の医療法改正時に全ての既存の医療法人が定款を変更しなければならなくなった際に、改正医療法に併せて強制的に定款を変更しなければならない部分の他に、任意で変更すればよかった持分制度に関してまで定款例に通りに変更してしまい、医療法人側も知らないままに持分のない医療法人に変更してしまっており、後日その事実が判明してトラブルになるケースもあります。

なお、よく広域医療法人の認可を取りたいと言うご相談を受けますが、医療法上、特定医療法人や社会医療法人はその認定手続きやモデル定款上定めがありますが、広域医療法人の認可と言う手続きはありません。

広域医療法人と言うのは、医療法人の開設する病院や診療所が二つ以上の都道府県にまたがっている医療法人に対する『通称』であり、認可する行政庁が知事ではなく地方厚生局長に代わるだけで、通常の医療法人と変わりません。

少し話がそれましたが、『広域医療法人化=持ち分なし医療法人になる』という理解は間違っています。

ただ、広域医療法人化を進める医療法人の場合には、他県の既にある医療法人を吸収合併することによって事業を拡大するケースは多く、その場合には現在の制度で新規に作る医療法人は全て持分のない医療法人であるため、歴史の浅い医療法人を吸収合併する場合には持分のない医療法人との合併となるために、その合併によって広域医療法人になる際に、吸収する側の存続する医療法人も持分の定めのない医療法人になることを強制されます。

恐らく、税理士のアドバイスはこの吸収合併による広域医療法人化のケースのみを全ての事例にも当てはまると不正確な間違った理解をしてのアドバイスだと思います。

従いまして、今回開設予定の診療所を最初からお父様の医療法人の新しい診療所として開設する為の、いわゆる広域医療法人化の定款変更認可手続きをする場合には、お父様の医療法人の持ち分はなくなりません。

逆に、先にまず個人として診療所を開設しその診療所を医療法人化した後で、お父様の医療法人と合併する場合には、どちらの医療法人が残りどちらの医療法人を吸収する場合でも関係なく持分の定めのない医療法人になります。

また、医療法人の持ち分が無くなる事に関しては、その医療法人の資産状況と相続対策をどう進めるかの考え方次第で、デメリットにもメリットにもなりえます。

医療法人は株式会社と違い、その経営によって生じた利益を配当によって還元する事が出来ない為、一般的に、歴史のある健全に経営されている医療法人ほど必要以上の内部留保金が溜まっており、それが実際の個人として処分可能な資産額を大幅に上回っており、相続時の相続税負担を重くする一因となっており問題になっております。

その為、相続対策の一つとしてあえて持分のない医療法人へ定款変更する例が増えてきております。

持ち分ありのままが良いのか、持ち分を無くした方が良いのかはこれからの医療法人経営と事業承継・相続に対する考え方によりますので、詳しくお考えを伺い、現状の医療法人の経営状況を含めた資産状況等も確認をさせて頂けないと、お客様にとってはこちらの方が良いですよとはお答えできません。

確実に広域化、承継ができるかどうかと言うのは、その管轄行政庁の指導の姿勢がどのような方向なのかと、その交渉を私の事務所に任せて頂けるかどうかによります。

なお、原則として相談及びアドバイスを含むコンサルは有料です。

今回のメールは前回ご来所頂きましたご相談についての継続相談として無料でご回答をさせて頂きますが、引き続きご相談やセカンドオピニオンとしてのアドバイスをご希望頂けるようでしたら、コンサル契約を締結して頂けるようお願い申し上げます。

今後ともどうぞ宜しくお願い致します。